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「住吉の長家」

住吉の長家(大阪市住吉区)

設計期間−1975年1月〜同8月
間口2間3,450mm 奥行8間14,250mm 敷地57.3平方m 建築面積33.7平方m 地上2階RC建築
竣工−1926年
設計−安藤忠雄

1979年、日本建築学会賞受賞。短期間に評価された珍しい新人建築家(当時29才)の作品だが、まさに賛
否両論、激論の対象となった代表的建築だろう。

名称は「長家」だが共同住宅ではなく、個建て住宅だ。が、その長家の中庭、通り庭、後庭の様式を巧みに
取り込んでいて、それによって得られるもの、失っているものの差が激しい。
何と言っても、1階、2階とも屋根がない中庭があるので、雨天時のそれぞれの移動には傘が必要であり、
荒天時のそれを想像すると絶句する。まして、施主は住み続けて40年経過しているので、決して若年とは
言えないので相当な不便を強いられていることは想像にかたくない。
また、採光も含めて、外気と接しているのは屋根のない中庭だけなので、通気換気が良好とは言えず、間断
による(つまり冬寒く、夏暑い)快適性も得られているとは言えない。
つまり、何かを得るために、他のものを犠牲にして(普通、大切にされているもの)成り立っている建築、
と言えるのである。
他、玄関から入って、いきなり階段と向かい合わせずに、あえて距離を置いていること。2階のゲストルー
ム(予備室)には階段ではなく渡り廊下で繋げて変化を与えている点などに小宇宙的な世界観が感じられ、
建築家として非凡さかが現われている。最低の建築は最高の建築と紙一重だ。全てを満たしていることは、
全てを失っていることであり、それは「人生」も同じである。
(非常に丁寧なコンクリート打ち放しがこの建築の作品性の高さを導いている点も見逃せない。)



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