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「バルミューダ」
バルミューダ(BALMUDA)
寺尾玄(Gen Terao)1973年、茨城県生まれ。 高校は中退だし、目立った学歴は見当たらない。デザイナーと呼ぶべきなのか、技術者と称するへきなのか、 ひとくくりで語れる人物ではない。個々の商品も興味深いが、まだ若いこの人の「伝記」は百倍、面白い。 それは、デザイン業界、あるいはデザイン教育の在り方について、氏が投げかけている問題は大きい。 バルミューダと言えば扇風機で有名になり、知った人が多いが、実はその前にデスク・スタンド照明を付く っている。 この当時は「有限会社バルミューダデザイン」だったが、それを8年後、「バルミューダ株式会社」となっ た経緯に多くの真理が隠されている。高校時代に「理系」か「文系」かの選択を迫られて嫌気がさして、ミュージシャン志望を抱いて海外放浪生 活も帰国して仕事としては上手く進まずにいた頃の彼女がデザインを勉強していた影響で「プロダクトデザ イン」の世界を知る。独学で本を立ち読みしたりCADを修得した段階で、製造や生産を学ぶために飛び込 んだ春日井製作所。ここで切削やプレスなどの金属加工をマスターする。 最初にチャレンジしたのがデスクライト。金属の無垢を削り出した形はとてもシャープで美しく、生産効率 最優先のジャパンプロダクトの中では特別な異彩を放っていた。(私の記憶では、この頃、やって寺尾さん の所在を探り当て、電話したのが春日井製作所だった。実に丁寧な応対が記憶に残っている。) 売り出して見ると、全くの不振で、外観だけのデザインでは「商売にならない」と悟り、もっと本質的な機 能の改良に目を向ける。その第一策が扇風機の「Green Fan」だったということになる。 あれから15年が経過して、デザイン誌として有名なAXISの表紙を飾るまでになった。プロダクトデザ インの在り方も含めて、まさに時代の寵児として日本だけでなく、世界から注目される存在となった。 言ってみれば嘗ての本田宗一郎やスティーブ・ジョブズと同じで、一つの物指しでは捉え切れない、個人と してのキャラクターの理解抜きに「寺尾玄」や「バルミューダ」は語れない。 しかし、少なくてもプレゼンテーション力に重きを置いて権力者側に仕える一辺倒の概念、教育とは真逆の 活動であり、上から叩いて現状のプロダクトデザインの土俵で評価したりする行為は厳しく慎みたい。全く 教育を受けなかった人がトップに立っている。諸々の既存の機関は完全に敗北した事を認めるべきと思う。
バルミューダ、寺尾玄さんの躍進ははじまったばかりである。すごいなぁ〜。
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