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映画「2001年宇宙の旅」


映画「2001年宇宙の旅」スタンリー・キューブリック監督 1968年

20世紀で、最も偉大な芸術を選ぶとしたら、この映画になる可能性が高いだろう。

原題−2001:A Space Odyssey
脚本−スタンリー・キューブリック アーサー・C・クラーク
制作費−約38億円
形式−70mmシネラマ映写 上映時間140分


冒頭ね観客は真っ暗なスクリーンの中に浮かび上がる地球、そして月、その先に太陽が一直線に並
ぶ壮大なシーンを「ツァラトゥストラはかく語りき」の音楽で宇宙の彼方に放り込まれる。
が、次に現われるのが何と、猿で、SF映画と思っていた観客に肩透かしを喰らわせる。
しはかし、冒頭のこの不思議なシーンこそ、この映画のテーマが凝縮されており、猿に啓示を与え
るモノリスの存在や道具の誕生を宇宙船に重ね合わせてストーリーに入って行くイントロダクショ
ンだったことを気付かされることになる。
やがて、道具が発展した象徴としてコンピュータHALが登場し、クライマックスを迎える。とて
も60年代半ばに考えられたものとは思えない発想、推理、撮影セットに満ちあふれていた。ぐだ
ぐだとした解説は野暮な気がするが、娯楽が映画からテレビに移行する時代であり、ストーリーと
して娯楽映画とはほど遠い哲学や新しい文学を思わせる内容は、映画文化の決定版とも言えるシネ
ラマ方式に花開いた傑作中の傑作となっている。

しかし、この映画は今日、見る事が出来ない。DVDやBlu−rayを使ってモニターでは再現
出来るが、シネラマ映画館は21世紀前に姿を消している。時代は退歩している?残念無念である。

※個人的エピソード
東京はテアトル東京で上映されていた。話題作だったが、前評判は必ずしも良くなく、半信半疑で
観に行ったが、昼間だったが客席はガラガラだったため、最高の位置に座れた。初めて見るシネラ
マの巨大スクリーン、直ぐに館内は真っ暗になり、あの有名な音楽が流れだした。もう、あの冒頭
の2分弱は身体がブルブルと震えるほど引き寄せられた。はじめから凄かったし、とにかく映画と
して説得力があり、美しかった。
以降、81年に閉館されるまで、10回は観たと思う。私の青春時代の芸術観、ものの見方を支配
し続けた存在だった。



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