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70才到達記念出版「三原昌平全集」
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「三原昌平全集ダイジェスト版」番外編
対談第27回

地場産業のデザインに関わって

出席:三原昌平 佐藤信泰 (司会)島添昭義
1990年3月2日

「デザイナーはプロデューサーやコーディネーターの側面も必要である」

司会:クラフトデザイン協会の中では、意外とデザイナーという人が少なくて、
スタジオクラフトマンがかなり多い。佐藤信泰さんは佐々木硝子で企業内デザイ
ナーであり、三原昌平さんはフリーのデザイナーということで、クラフトを含め
て幅広く仕事をされておられます。特に地場の仕事をされることが多いですね。

佐藤:三原さんは全然苦労しないでものができてしまっているという、スライド
を見ただけではそういう印象ですけども、大変なご苦労もあるのでしょう。

三原:よく言われるんですけど、まず一つは言葉の問題があります。デザイナー
はすぐ横文字を使いたがるんです。コンセプトだのセグメンテーションだのって、
普通の漆の仕事をされる方にとっては、わけのわからない言葉ですよね。ですか
ら、コミュニケーションの仕方まで摩擦があったということと、後は感覚的な問
題ですね。地場蚕業はほとんで地方に散らばっていますから、都会の生活は知ら
ないわけです。私は基本的に自分の生活の具現化みたいな部分にデザインのウエ
イトをおいていますから、自分かどうやって欲しいものを手にいれるかというこ
とを基本にしています。したがって、私の生活の仕方と産地にいる方の生活の仕
方はやっぱり違いますから、そこでの認識の差は大きいと思います。
佐藤;私は企業内デザイナーとして仕事をしておりますけれど、今三原さんのス
ライドを見せていただいて、僕も多少は地場と関連があると思っていたんですが、
比較にならないぐらい、三原さんと地場の関わりを感じましたので、その辺の苦
労話みたいなものを聞かせていただげれば非常にありがたいと思います。
私も多少関係があるというのは、地域の伝統的な技術を、都会の生活に生かすた
めにはどういう企画をしたらいいかということを考えているんです。

司会:三原さんの場合はメーカーと直接、専属契約をされていることはあります
か。

三原;ほとんどが年間契約といいますか、長期契約が多いですね。

司会;三原さんのデザインポリシーというのは、自分の生活の具現化するという
か、自分の生活観に立っているわけですから、そうじゃないメーカーからの依頼
の場合にはどうされるんですか。断っちゃう?

三原:ま、そうですね。自分の出来る範囲は限られていることもありますし、そ
こに自分のテーマが感じられない場合には、いい仕事をしてないですね。苦し紛
れの仕事をしていますから、結果が見えている場合にはお断りしています。

佐藤:地場産業という非常に伝統的な技術があって、なぜ新しいものがでてこな
いのか、やはり地場産業の問題点だと思うんです。その問題点は各地場が抱えて
いるんですけれども、デザイナーの目で見て、その問題点を抽出してどうにかし
ようという気持ちが先行して、それで仕事をされているということが大半という
ことですね。

三原:そうですね。

司会:流通はどうなんですか。メーカーを指導して、一緒にデザインして、もの
はできますね。そのあと、どこに売っていくかとか、どういう展開をしていくか
とか、その辺までデザインされるんですか。

三原:それは個々によって違ってきますよね。意外と地場産業というか、伝統工
芸品なりハンドメイドのものは、流通というものを専門的に見がちなんですね。
それは専門店一つむとっても、デザインで切っている専門店もあるし、素材で切
っている専門店あるし、もうちょっと広範に経営者の趣味で切っているお店もあ
るわけですから、例えば漆であれば漆の売り場だけで売る必要はないんだという
ことも教えてあげないといけませんね。

司会:デザイナーというのはクライアントがいて、オーダーがきてわけですが、
そうじゃなくて、地場の游工房と組んで展覧会をやって、反応を待っているとい
う段階ですね。そういうのはデザイナーの仕事としてはかなり特殊な、ユニーク
な仕事だと思うんですが、その辺はどうなんでしょう。

三原:デザインしていくと、どこで作ったらいいか問題になるし、作ったあと、
どこで流通したらよいかという問題にぶちあたりますね。つその後は誰に使って
もらったらいいかということで、どんどん末端の方まで広がってしまうわけです。
厳密にいうとデザイナーというだけでは完結しなくて、プロデューサーとかコー
ディネーターという側面も、どうしてもくっついてきますね。ただ、自分はプロ
デューサーだと吹いて回るつもりはないですけど。

司会:その辺は佐藤さん、どう思われますか。つまり、トップしかしてなくて営
業が動かない。

佐藤:それは同じ現実がありますね。だけど、生産部門が動かないというのは、
メーカーだったらまずありませんから、商品を企画して、商品化が決定すると、
作る方は否応無しに作らなくっちゃいけない。今度、売る側になると同じような
部分が出てくると思います。

「マーケットリサーチについて」

三原:80年代に流行った言葉は色々あったと思うんですが、主なものに多様化、
差別化、個別化の3つがあると思うんです。多様化というのは一つの現象論だと
思うのです。特にオイルショック後に非常に加速したと思うんですが、一定の品
物を大量に作るということから、多品種少量で、いろんな人にいろんな価値があ
るという、発生の現象をたぶん語っている言葉だと思うんですよ。差別化は意外
と本質をついているようで、戦略的な言葉ですね。いろんな人がどういう具合に
価値をもっているかわからないから、わからないのだったら差をつけてあげよう
じゃないかと。唯一、本質的な言葉は個別化だと思うんです。個別化というのは、
例えば、ここに5人の人がいるとすると、個々に違った人生観と哲学を持ってい
るということですから、本当にいうと、それに合わせてものを作るということは
ありえないわけです。ただ、佐藤さんなり島添さんの人生観に共感を覚える人が
その商品を買うということは可能性として充分あるわけですよ。クラフトはマー
ケットリサーチ云々という架空のデータを前提にしないで、自分を追求した中に
本当の商品が生まれるんだという認識の方が、大事なんじゃないかという気がし
ますね。

佐藤:実際問題として、協会会員のおそらく70%は個人のクラフトマンなんです。
工場があるわけでありませんから、生産は非常に少ない量だと思います。そこら
へんへいくと、ちょっと内容が違うと思うんですよね。
司会:内容が違うというか、三原さんがいまおっしゃったことは、やりやすいわ
けですよね。一人でやっているわけですから、自然とそうなっちゃうわけです。

三原:ただ補足していえば、自分の人生観なり哲学ということですけど、そこで
初めて今度はクリエターとして鍛えられるわけですね。工房でただ朝から晩まで
閉じこもって、ものと向かい合って格闘すれば、その人の人生観なり思想が現わ
れるかというと、そうとも言えないわけで、あくまでその人の形而上でどこまで
自分を貫き通せるかという背景が必要になると思うんです。
佐藤:例えばメーカーとか地場産業もそうだと思いますが、消費者の幅が広いと
云うか、不特定多数の場合の商品開発だとすれば、リサーチというのはかなり大
きな問題でして、それに時間を費やさなければいけないわけです。その面からい
くと、クラフトマンの場合は個人的なキャラクターが中心ですから、逆の面とい
うのはありますね。

三原:ただマーケットリサーチをやってものを作るというには、僕は否定的です。
なぜかというと、実態があるようでないし、需要があるからものを作るというの
がマーケットリサーチの前提ですよね。いま、需要があるからものを作るんじゃ
なく、何か魅力的なものがあるからこそそこに需要が生まれる形態に変わってい
ると思うんです。だから、需要を掘り起こして何かやるというのは掘り起こしつ
くされてしまって、むしろ突拍子も無い発想からきた面白さとか哲学みたいな部
分に、むしろ潜在的な需要が移っている。それはマーケットリサーチでは絶対解
明出来ないと思っています。

司会:さっきちょっと言ったけど、消費者は自分が何をほしいのかわからないと
思うんです。いま、三原さんがおっしゃったのは、その事だと思うけど、こうい
うものがあるよって、チラつかせるというのかな、それはリサーチしても出いこ
ないと思うんです。ですから、佐々木硝子の20代の女性が、自分の感性でこうい
うものがいいなというものの中から出てくる。ただ、大きなメーカーになったり
すると、そうやみくもにもできませんものね。リサーチみたいな安全パイプみた
いなものはあるでしょう。それはどのくらいいけそうですか。

佐藤:かなり装置産業的な部分の企業のデザイナーであれば、そうも言っていら
れない部分があるわけです。国内の市場はこうだけど、アメリカの市場でどうか、
ヨーロッパの市場でどうか、というところまで広げていくと、リサーチなんて言
葉も出てくるかなという気がするわけです。だから三原さんの場合は発表会やっ
て、国内で評価が得られれば市場がパッと広がるわけです。それがもう一ついく
と、今度は国際的な市場に展開できるわけです。それは漆の部分じゃなくて、む
しろクロックのような、インターナショナルの仕事をされていると思うんですが、
現実に相当海外に出ているんじゃないですか。

三原:出ていますね。それはわりとクラフト以外のものですね。特に漆は日本人
独特の感性で、展示会のおつき合いで何回か海外に出したりしたりしたんですけ
ど、漆というものをわれわれが感じ取っているように感じとってくれませんね。

「游工房の関わり」

司会:ところで、非常に興味深いのは、游工房とのおつきあいの仕方で、津軽塗
のパターンの指導をされたわけですが、あれは絵に描いてやるわけにいきません
よね。その辺はどのようにやられたんですか。

三原:私も正直言って、津軽塗を研究して行ったわけじゃないですから、行く度
に考えが変わったりしていたんです。いちばんのショックで、今の游工房の仕事
のきっかけになったのは、仕事場に転がっていた失敗作の手板なんです。失敗作
なので、他のどの柄にも似ていないわけです。ひょっと取り上げたら、失敗の過
程の姿に、津軽塗はこうなんだという、解答みたいなものが自分で得られたんで
す。蒔絵とか漆絵とか、漆の加飾の技法がいろいろありますけど、津軽塗の場合
は直接に手を加えないわけです。途中に仕掛けベラとか、菜種の種とか、中間の
媒体を置くわけです。だから、出来上がったものに全く手の跡が残っていないと
いうのが津軽塗なんじゃないかと、僕は結論を得たのです。だから、游工房の人
に頼んだのは、とにかく仕掛けベラとかナタネに代わる方法を考えようと。一切、
手でこじくりまわしてはだめと。ちょっとそういう衝動はあるんですけどね。そ
れまで游工房もそういう感じがあって、筆でかき混ぜるやうなパターンもやって
いたんですが、そういうものは一切だめと。途中で媒体になっている、仕掛けに
使う道具、方法ほ工夫しようということで始めたんです。

佐藤:そうすると、津軽塗というのは、元来、非常に素朴な技術表現で、だけど
仕掛けにある程度のものがあって、それで育って来たと。それが今の時代になっ
て、その仕掛けに対して、三原さんの目利きという意味でそれを見直したという
ことですね。そういう目利きが一番重要な事なんでしょうね。

三原:目利きというか、その世界にトップリ浸かっていると、自分達が一体なに
をやっているかという原点がだんだん見えなくなってくると思うんですが、普段、
ずっと同じ繰り替えしをしていると自分達がやっている意味がだんだん薄れてい
ってしまうんじゃないかと思うんです。

司会:三原さんは、鋳物があって、漆があって、焼き物があって、いわゆる素材
のプロではないですね。ある意味で客観的に素材を見ていると思うんですが、で
も全く知らなくてもだめだし、その辺はどのようにされているのですか。
三原:特にクラフトはその代表例だと思うんですが、ものづくりというのはどん
どん専門化されますよね。素材に縛られたり、技法に縛られたりというのは、ほ
とんど専門化された枠でものを考えるという形態が出来上がっていると思うんで
す。自分の姿勢というか、デザインの関わり方の形態というのは、一つは専門化
しないということと、なるべく長期化しないということですね。とにかく、その
都度、結論を出していくというか、その結論の集積がデザインなんだという考え
方をしているんです。

司会:長期化しないというのは?

三原:まず、専門化してしまうというのは、問題点がはっきりするようで、さっ
き言ったようにボケると思うんです。長期化というのは究極の、みたいな感じで
長いスパンでものを考えようなんて、一見良さそうに見える視点でやっていたら、
多分だめだったと思います。その都度、毎年、結論を出していくという形でやっ
ていかないと。

司会:その結論というのは具体的に何ですか。

三原:経済的な成果を上げるというのが一つと、それからお互いの学習ですね。
游工房にすればデザインとか、はっきり言って社会常識みたいな問題も結構多い
んですけどね。それから、私にすれば游工房の立場というものを理解しないとい
けませんから、流れみたいな事ですね。

「地場産業という言葉」

司会:クラフト協会の場合、地場産業ということが随分いわれているんですけれ
ど、スタジオクラフトマンが多くなって来ている事も含めて、なかなか接点が持
てないでいるのが現状なんですね。持ちたいと思っても持てないと言う部分があ
るんです。これは努力が足りないということがあるかもしれないけど、自分で出
来ちゃうからその必要がないこともあると思うんです。ただ、地場のもっている
技術と自分の感覚がうまく合って、それがものになっていくと価格的な問題もリ
ーズナブルなものになっていく可能性があるし、ある意味では地場もむそれを望
んでいると思うんですが。

佐藤:最初に意識の問題で、協会員が二百何十人いても、そういう意識の人とい
うのはいないんじゃないかと思うわけね。というのは自分のスタジオで全て満足
している。僕なんかは、こういう団体の任務というか仕事としては、それが本当
に不可欠の要素だと思うにもかかわらず、そういうところにアタックする人が少
ないというのは非常に残念なわけです。その可能性というのはかなり広がりがあ
るはずですから、市場性も含めて、その可能性をもう少しクラフトマンが活用し
ていって欲しい。それを痛切に感じますね。その辺、もっとアタックするクラフ
トマンがいてもいいというふうに感じることはありませんか。

三原:あまりないです。

佐藤:それは、あまり大勢いても、今度、三原さんとしては競争相手になるわけ
ですからね。

三原:それは強いですけどね。ただ、さっきの繰り返しになりますが、クラフト
マンというのは自己探究が自分の座標軸だと思うんです。デザイナーは自分とは
何ぞやという部分を探究すると同時に、相手をどこまで理解できるかというバラ
ンスの上に立っていますね。さらに今度、プロデューサーになると、相手の理解
と社会の理解という、両方のスタンスに跨がっていると思うのです。だから、ク
ラフトマンはとにかく自己探究、デザイナーは自己探究と相手の理解の上にたっ
ている。プロデューサーは相手の理解と社会の読み方。その3つのバランスがあ
るのじゃないですかね。

司会:協会の場合は、デザイナータイプの人もいるわけですよ。協会で地場産業
に関わっている人たちは、クラフトマンという形で自分のポジションを置いて、
それでデザイナーとして参画するわけです。ですから、専門知識をよくもってい
る。ですから、三原さんみたいにパッパッと切れない部分があるわけです。それ
から佐藤さんがおっしゃるように、社団法人というのは、地場の振興に役立ちな
さいということがありまして、地場からもそういう期待をされている部分もある
わけです。ところが、最近の現状を見ると、地場もクラフトマンに頼むよりも、
デザイナーにデザインを依頼した方がいいという一つの流れがあるんですね。そ
ういう現象はどう思われますか。

三原:返答が難しいな。私は本当はアンチ地場産業なんです。地場産業という言
葉を使うのをやめなさいと言ってきたんです。あれは一つの幻想ですね。みんな
まとめて良くなりましょうということですからね。それがどういう形態でやって
きたかというと、中央のデザイナーとか広告代理店の先生が現地に行って「あな
たたちはこういう課題を背負っているんですよ。」という話にだいたい終始して
いる。この中から彼等が問題点を発掘できるということはまずあり得ないし、さ
っきの、まさに作り手側の個別化の対応に全然なってないわけです。だから、私
は地場産業という単位で今迄ものを考えたことはないです。

司会:地場産業というものを否定しているわけじゃなくて、地場全体ではなくて、
その中でポテンシャルのある部分にアタックするということでしょう。

三原:そうですね。今の状態を地場産業という言葉を使わざるを得ないわけです
が、地場産業という言葉に隠されている誤解の方が、たぶん多いのではないかと
思うのです。

佐藤:もっと違う言葉が出来てもいい。地場産業という言葉を僕も使いたくない
というのは常日頃思っていますね。だけど、その表現が何かといったら、やっぱ
り伝統的な地元で生まれた技術や素材があって、それをおのずと、その土地の風
土、人間性、生活環境から出てきた独特のものですね。それが非常に素晴らしい
ものだから伝承されてきているわけです。その素晴らしいものを例えば東北地方
だけで消費するんでしゃなくて、都心で評価されてもいいし、もっと国際的に評
価されてもいい。そう言う事で、三原さんのアタックされている地域に関して非
常に素晴らしいと思うんだけれども、まだまだ日本全国でみたら、もっともっと
やらなくっちゃいけないし、その可能性はありますね。

「ものづくりに人格あり」

司会:三原さんは人間的なおつきあいも重要視されているようですね。

三原:そうですね。そこは「ものづくりに人格あり」という部分でしか考えてい
ませんから。近代産業は全部対象化するといいますか、マーケッティングの理論
というのは、とにかく相手を対象化することによって、そこにある一定の価値を
解明しようという論法ですよね。それはくどいですが、私のデザイン手法は全然
違うのです。そこには本質論は多分ないだろうという判断をしていますから。地
場があって、そこに突出するものがあって、それがまたひとつの引き金になって
上がってくるだろうという話はわかるんですが、僕はそこまで全然考えていませ
んね。そういうふうに地場を思いやろうという気持ちは全然ありません。理解し
ない人はそれで結構だし、周りがどうなろうと私の関係したことでないという言
い方をしています。

佐藤:クラフトということにかんしては、僕もいろいろ問題点もあるんですが、
クラフトマン自ら手を使って作ったものは、それだけでさくらふとと言えるんだ
けれど、それだけがクラフトといふうに解釈しないわけです。例えば三原さんの
テーブルが、むしろクラフトじゃないかという気もするわけですね。クラフトの
スパンを広げて考えるときに、例えばガウディのサグラダファミリアみたいな協
会というのは、クラフトというように受け取れるんですが、どうでしょう。

三原:そうですね。

佐藤:例えば庭園にしても建築にしても、クラフトと言えるような世界があるわ
けですね。そういう部分でもう少しJCDAがアクションを起こせる可能性を痛切に
感じたわけです。そこでクラフト展の話になりますが、インテリアからエクステ
ィア、それからマインドウェアいうようなテーマを作っていってるわけです。こ
れはまだ2年目ぐらいで、その効果がちっとも出てこないというのが実感なんで
すが、何とかしていきたいと。

三原:本当に外側から失礼な意見かもしれませんが、JCDAの十八番というのは9
月に松屋で開催する展示会だと思います。しかし、あの形式を踏襲している限り
はJCDAの基本的な思想は多分変わらないと思うのです。本当にくどいですが、も
のづくりは人格的であり、思想的であると思うのです。そうした場合、場所の問
題というのは結構大きいわけです。自分が作ったものがどこに並ぶか既に頭に入
ってますから、これは具合がいいことばかりではないですね。もっとアウトドア
でやってみるとか、あるいは純粋にどこかのギャラリーを借りて、総花的ではな
く有志だけで固まってやるという方法から多分突破口が、それは思想だと思うの
ですが、芽生えてくると思います。

佐藤:クラフト展自体がそういう意味でテストケース的な舞台とすれば、これは
趣旨にかなり反してしまうと思うのです。常設のクラフトギャラリーを活用する
ことも考えられますが、いずれにせよ、一度、展覧会の環境を全く変えてやって
みる必要があると思いますけれど。

司会:JCDAの場合はいろいろな人がいますからね。

三原:そうですね。面白い方ばかり集まってやるので、その難しさは大変なもの
だと思います。ただ、みんなが納得して、それを受け入れるデパートも納得し、
協会としても納得するという、三者が納得する難しさというものがあって、そこ
に問題点が出ちゃうと思うのです。あくまで外部の人間として見ると、どうも集
団合意みたいな部分で角がとれちゃう原因があるのじゃないかと若干思うのです
が。

司会:賞とかグランプリというのは一応協会の顔になるわけですが、、。

佐藤:あまりに民主的すぎて、合意で決めるのがはたしていいかどうかという問
題になると、決していい話ばかりではないです。それよりむしろ、展覧会をプロ
デュースするノウハウが一番重要だと思います。だから思い切ってプロデューサ
ー・システムの導入ということはあるかもしれません。協会内部のメンバーの意
見を聞くと、そういう意見はかなりたくさんありますね。総合展ではなくて、ジ
ャンル別の展覧会を隔年でやっていこうという提案もあるわけですが、それを聞
き入れる体制にしなければいけないでしょうね。

「ものだけをデザインするのではなく」

契約についてちょっとお聞きしたいのですが、ある地場産業のメーカーと契約し
ているわけですね。それは一つのデザインに対しての契約ということですか。

三原:私の仕事の一番は何かというと、会社をデザインする色彩が非常に濃いで
すね。一つだけ自信があるのは、クライアントは私が抜けたら多分混乱すると思
います。それは僕が会社をデザインしている志向が強いからなんです。ですから、
結果的に佐藤さんのお話ですが、一つのデザインで幾らということではなくて、
年間契約と商業ベースにのったものについてはロイヤリティが発生するというこ
とになります。

佐藤:僕の会社でアメリカの販売会社がありまして、それはデザイナー契約をや
っているのです。それは今三原さんが言うような姿では全くないです。というこ
とはそのデザインが千個なり一万個売れたものに対しては払いますが、アドバイ
ス的な契約は一切ないです。これがアメリカの大半の契約なんです。それからい
くと日本の場合はちょっと違う。僕なんか企業でのデザインマネージャーみたい
な立場にいると、フリーランスのデザイナーの仕事が企業のイメージとかポリシ
ーにフィットしていれば是非やってもらいたい部分があるんですね。

司会:三原さんのお話は一種のCIデザインのことをおっしゃっているわけです
から、、それは大手企業である程度固まっているところではなくて、三原さんが
食い込んで何とかしようという部分じゃないんですか。

三原:というか、多分、私みたいな仕事のやり方は増えて行くと思います。まさ
に情報化時代で、デザインが全ての軸になっていますね。そうするとデザイン性
の形式というのが即、経営の形式なんですね。そうすると、今の経営者はそうい
うトレーニングが行われていませんから、経営的なファクターは決定的に欠落し
ているわけです。

佐藤:そういう考えを、経営者が受け入れる体制があったということですね。

三原:そうですね。だから、そういう柔らかさが必要ですね。

司会:三原さんのお話を伺っていると、デザインというのはものだけをデザインす
るんじゃなくて、地場産業のメーカーも会社であってもその会社全体の方向性まで
デザインするということだと思います。多分その辺が三原さんのデザインのベース
にあって、それでうまくいっている気がします。地場のデザインというと、単にも
のだけのデザインで終わりがちなので、その辺をお聞きしたのは非常にためになり
ました。

三原:そういう意味でデザインという言葉はあまり使いたくないのですが、要する
にものを作る考え方を理解していただくということですね。

佐藤:言い方を変えれば、クラフトマンがクラフト的に作るのと、今度、クラフト
展を一つのクラフトとして作る。企業をデザインするのと同じように、その必要性
があると思います。

三原:時代がとにかく変わっていますよね。流通面からいくと個人が使うために買
うという行為から、会社のプレミアム、あるいは人に贈るという購買理由になって
いるんですね。それをクラフトも解明しておく必要があることと、それからものの
作り方が用途開発じゃなくて、情報化時代のものづくりだという事だと思うのです。

中略

佐藤:それはJCDAとしても必要性はある話ですよ。IDの世界でも必要だしくらふと
の世界でも必要だと思いますね。

三原:何か夢のためのとか、何かの理想のためとか、大雑把に言ってしまえば、特
定の形而上のためのというものづくりが、最も力があるのではないかと思います。

佐藤:そしてその行為がグローバルに成長するようなことが必要なんでしょうね。

三原:売れる売れないという押し問答でものづくりをしていたら、クラフトの魅力
って全然ないですね。もっと壮大で夢に溢れたものがクラフトだと思います。

佐藤:そうですね。ものづくりの原点にいるんだから、それを効果的に広げていき
たいですね。

司会:今日はお忙しいところありがとうございました。





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